ヴァイオリン講師が思う「緊張の対策」

どうすれば、緊張しなくなるんでしょうか…

ヴァイオリンの講師をしていると、生徒さんからよく緊張についての質問をいただきます。

  • 練習では弾けていたのに、本番では思ったように弾けなかった…
  • 緊張してしまって、頭が真っ白に…
  • 舞台に立つと脚がプルプルして…

わかります。とてもわかります。
ヴァイオリンって、ただ弾くだけでもかなり難しいのに、それを大勢が注目する前で…となると、地上10メートルの高さで綱渡りをしているかのような気持ちになりますよね。

結論から申し上げると、緊張はなくならないと思います。
演奏家の端くれとして様々なステージに立たせていただいて10年目になりますが、私もいまだに緊張はします。
ただ、これまで自分なりの緊張の対策を試してきた中で、効果があると感じるものがあったので、今回はそれをご紹介してみたいと思います。
人によって相性はあるかもしれませんが、なにかの参考になると幸いです。

練習の出来の良いときを100%とすると、本番ではどうしても60〜70%くらいの出来になってしまいます。
でも、緊張の対策をすることによって少しずつ100%の実力に近づけていくことができると思っています。

①緊張する状態を経験しておく

家族やお友達にお客さん役になってもらい、「1回」通して弾くことがおすすめです。
この時、つっかえてもなるべく最後まで通して弾き切ることがポイント。
お客さん役の人には、途中で「そこ違うんじゃない?」などと思っても制止しないでほしいことを事前にお願いしておきましょう。
そして、できればお客さん役の人は「ながら聴き」ではなく、改まった状態で聴いてあげてください。(演奏側がお客さん役に、お茶をいれて座ってもらう等して、そういうを空気を作っておくと良いです)

こうすることにより、「聴かれている」プレッシャーを経験することができます。
きっと普段の練習よりも思うように弾けなくなると思いますが、まずはそれで大丈夫です。
普段の練習に加えて、3日に1回でも、週に1回でも良いので、この経験を積んでおくと良いと思います。

②練習場所を変えて、違う聴こえ方を経験しておく

フローリングの部屋と絨毯の部屋。
広い部屋と狭い部屋。
天井の高さ、クローゼットが空いているかどうか…
いろんな条件によって、室内の残響は変わってきます。
いつも決まった部屋で練習をしている人は、できれば別の部屋に移ってみて、違う聴こえ方を経験しておくと良いと思います。

一般的に絨毯の部屋などは、音が布に吸い込まれて、残響が少なくなります。
このことを「響きがデッド(死)な状態」と言います。
デッドな部屋は、多くの方が弾きづらいと感じると思います。

自分の出した音が耳に届く早さも色々経験しておくと、なお良いです。
狭い部屋では音が跳ね返ってくるのが早いのですが、広いホールなどでは、「だいぶ遅く聴こえてきて混乱してしまう」という場合もあります。
家だとなかなか難しいことですが、たまにレンタルスタジオを借りて練習してみるとわかりやすいと思います。
私は公共のホールを複数人でシェアして練習会をやってみたりしていました。ちょっと高いですが、オススメです。

③本番の衣装を身に付けて演奏してみる

本番でヒールのある靴を履く場合、履いた状態での演奏を経験しておいたほうが絶対に良いです。
高いヒールに気を取られてしまって演奏に集中できなかった…という方は結構いらっしゃいます。
腕周りや衣装の肌触りを確認しておくことも大事です。

  • 本番当日に初めて着てみたら、腕が動かしづらかった
  • 歩いてみたらロングドレスの裾を踏んでしまって転んだ

…ということのないように、事前に確認したうえで、着慣れておきましょう。

④本番のシーンをイメージして再現してみる

例えば発表会なら、アナウンスで名前を呼ばれて、舞台に上がるシーンから再現してみましょう。
演奏までの流れの一例としては、

  1. 名前を呼ばれる
  2. 立ち位置まで歩く
  3. お辞儀
  4. 準備(椅子の調整やチューニング)
  5. 呼吸を整える
  6. 曲のテンポをイメージ
  7. 演奏開始

このように、細かく区切ると多くのプロセスが存在します。
本番で「あれ?!次なんだっけ?」と思ってしまうと一気に緊張をしてしまうので、簡単な流れだと思っても何度も確認しておくことをオススメします。

⑤録画(録音)してみる

撮られていると思うだけで、普段の練習よりちょっと緊張しますよね。
何度でも撮り直せる状態ではなく、敢えて「一発」と決めて録音してみるのも緊張感が経験できると思います。
(話がそれますが、フォームの確認や客観的に聴けるという観点からも、録音録画はオススメです)

番外編

照明を多めに浴びながら弾いてみると、ステージをイメージしやすいです。
それと、寒~い部屋でいきなり弾いてみると、指が動かない状態が経験できます。これ、恐怖ですよ…

本番当日の緊張対策

  • 息が上がる行動(ギリギリに移動など)をしないよう、早めの準備をする
  • 笑顔でいる(理由不明ですが、私はリラックス効果ありです)
  • 「ベストを尽くすが、仮にうまくいかなくても死ぬわけではない」と唱える

…といったかんじです。
あくまで、私の個人的な所感なので、「へえ~そういう人もいるんだ」くらいに思っていただけたら幸いです。
ほかに、こんな対策をしているよ!というアイデアがありましたら是非教えていただけると嬉しいです。

緊張は決して悪いことではないです。
ただ、せっかくたくさん練習してきたんだから、できたら100%の出来になるべく近づけたいですよね。
そういう時はまずは上記の対策を試してみてもらえたら嬉しいです。
少しでも100%の出来に近づけますように。

読んでいただきありがとうございました!